孔内水平載荷試験(LLT試験)の目的と試験方法

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孔内試験の種類

ボーリング調査で行われる孔内試験には一般的に2つの主要な試験があります。1つは地盤の強度や支持層の深さを調査する標準貫入試験です。これは、建物や構造物の基礎設計を行う上で、地盤の縦方向の強度や性質を評価するための基本的な試験方法です。もう1つが、孔内水平載荷試験(LLT試験)です。この試験は、地盤の水平方向の強度を調べるためのものです。

作業風景

孔内水平載荷試験(LLT試験)とは?

孔内水平載荷試験(LLT試験)は、地盤の水平方向の強度を調べるために行われます。では、なぜ地盤の水平方向の強度を知る必要があるのでしょうか?その理由は、建物や構造物の基礎設計に深く関わってきます。

建物基礎の種類と孔内水平載荷試験(LLT試験)の重要性

建物の基礎には大きく分けて2種類があります。1つは直接基礎、もう1つが杭基礎です。直接基礎は、建物の重量を直接地面に伝える構造で、比較的浅い基礎が特徴です。これに対し、杭基礎は地面から数メートルから数十メートルにわたる杭を地中に埋め込み、建物の荷重を支持層と呼ばれる硬い地層に伝える構造です。

地震が発生すると、地面が揺れるのと同時に、杭も揺れることになります。これは、杭に大きな力が作用することを意味します。このとき、杭の変形や応力は、地盤の強さ、特に水平方向の強度に大きく依存します。地盤の強度が高ければ、地震時に地盤が杭に対してクッションの役割を果たし、杭の揺れを抑えることができます。専門用語では、これを「地盤のバネが強い」と表現します。逆に、地盤の強度が弱く、クッション効果が薄い場合、地震時に杭は大きく揺れやすくなり、それに伴って杭に作用する応力も大きくなります。このため、杭基礎の設計においては、地盤の水平方向の強度を正確に把握することが重要です。

孔内水平載荷試験 試験状況

孔内水平載荷試験(LLT試験)で分かること

孔内水平載荷試験(LLT試験)により、以下の2つの重要な地盤特性が分かります。

  • 水平地盤反力係数: これは、地盤が杭に対してどれだけの抵抗力を持つかを示す値です。杭が地盤に対して押される際、地盤がどれだけの反力を発生させるかを評価します。
  • 変形係数: これは、地盤が荷重を受けたときにどれだけ変形するかを示す値です。この値に基づいて、杭がどの程度変形するかを予測し、設計に反映させます。

これらの係数は、水平方向の地盤の剛性、すなわち地盤が杭に対してどれだけの抵抗力を持つかを評価するための指標となります。杭を設計する際には、これらの値を考慮し、杭に作用する応力や変形を算出します。

孔内水平載荷試験(LLT) ゾンデ挿入状況

孔内水平載荷試験(LLT試験)の方法

孔内水平載荷試験(LLT試験)の方法は、日本工業規格(JIS規格)に基づいて実施されます。試験の概要は次の通りです。

  1. 測定管の挿入: まず、地面に測定管(ゾンデ)を挿入します。この測定管は、水を注入することで膨らむ構造になっています。測定管を所定の深度まで挿入し、ガス圧を利用してセル内に圧力水を注入します。この水圧によってセルが膨張し、地盤(孔壁)に加圧されます。
  2. 水量の測定: セルに注入された水量は、ナイロンパイプを介してゾンデのセルに連結されている容積計で測定されます。これにより、水タンク前面のスタンドパイプ内の水位低下として水量が読み取られます。この読み取りによって、地盤に対する圧力がどの程度かかっているかが把握できます。
  3. 載荷試験: 載荷試験は時間―荷重制御法によって行います。具体的には、各荷重段階での測定は、載荷後15秒、30秒、1分、2分の時間間隔で行われます。原則として、2分間の測定を行い、時間依存の変化が見られない場合には1分で打ち切り、次の荷重段階に移行します。
孔内水平載荷試験(LLT試験)作業風景 360°ビュー版

孔内水平載荷試験(LLT試験)の重要性

このようにして、孔内水平載荷試験(LLT試験)では、地盤の水平強度を詳細に評価し、建物の基礎設計に必要なデータを取得します。得られたデータは、杭基礎の設計に反映され、地震時における杭の応力や変形を予測し、安全で効率的な基礎構造を実現するための基盤となります。特に、地震が多発する地域では、この試験の結果が建物の安全性に直接影響するため、非常に重要です。

結論

以上が、孔内水平載荷試験(LLT試験)の目的や試験方法についての詳細な説明です。この試験を通じて得られた地盤の水平強度データは、建物や構造物の安全性を確保するための不可欠な要素であり、特に杭基礎の設計においては重要な役割を果たします。